108 Blog

If you can dream it, you can do it.

車上荒らし

【第25話】

 

ヤスノリから、返してもらう物が無い。

 

お父さんがいない。

 

お母さんは病気で仕事が出来ない。

 

ヤスノリは小学4年生。

 

家は、今にも倒れそうな借家。

 

俺の情は、5人からヤスノリに移っていた。

 

 

俺は、ヤスノリに約束させた。

 

もう、恐喝をしないと。

 

 

5人は納得してなかったが、無い物は返せない。

 

俺は5人を強引に納得させた。

 

 

そう、俺はヤスノリに同情していた。

 

以前の俺を見てるみたいで。

 

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4年生の3学期にはなると『108軍団』は、俺を含め8人になっていた。

 

マナブ、リョウ、タク、ヨシタ、ノリオ、シンジ、オジサン。

 

昼休みになるとサッカーをしたり。

 

放課後は、学校近くの駄菓子屋に行ったり。

 

俺の家で、ファミコンしたりして遊んでいた。

 

 

最近は、万引きもやめて。

 

心もたぶん穏やかだ。

 

万引きをやめたのには、そもそも、理由がある。

 

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4年生の2学期に遡る。

 

まだ、ボロアパートに住んでいる時の話である。

 

そのころの俺は、万引き常習犯。

 

親の財布からお金をくすねたりもした。

 

未遂に終わったが、空き巣もやった。

 

 

 

そして、あの事件が起こる。

 

放課後。

 

俺は役場の駐車場の壁に向かって

 

サッカーボールを蹴って遊んでいた。

 

遊んでいたと言っても、一人遊びだ。

 

壁から跳ね返るボールをダイレクトで、何度も何度も。

 

 

疲れたし、そろそろ帰ろうかと思い。

 

ラスト1本は、思いっきり蹴った。

 

ボールが壁の脇に当たり

 

駐車場に停めてある

 

車と車の隙間に入ってしまった。

 

ボールを拾い、ふと車内を見ると。

 

100円玉が見えた。

 

周りを見渡したが、人の気配はない。

 

役場には、人影はみえるが

 

50mくらいは離れているので

 

ここまでは、見えないはずだ。

 

ドアをゆっくり開けて。

 

コインをポケットに入れ、ダッシュボードの中も探る。

 

 

そして、他の車の中も探る。

 

田舎の町役場なので

 

ほとんどの車に鍵はかかっていない。

 

そして、3台目の車を物色していると。

 

「おい、何をしている!?」

 

おじさんの声が後ろから響く。

 

振り返ると、強面のおじさんが立っている。

 

道をふさがれた俺は逃げられない。

 

俺は、強面のおじさんに首根っこを引っ張られて

 

役場の中に連れていかれる。

 

そこには、たくさんの職員がいて、みんなが俺の顔をみている。

 

その中に、見たことのある顔がある。

 

マサオのお母さんだ。

 

そうだった、マサオのお母さんは、役場で働いていたんだ。

 

おじさん「ポケットに入れたものを出しなさい」

 

黙ってる俺を見たマサオのお母さんが

 

「108君、正直に言いなさい!」

 

言い逃れができないと思った俺は

 

「ごめんなさい!」と言い、100円玉をテーブルの上に置いた。

 

おじさん「今回は警察は呼ばないけど、もう二度とするんじゃないぞ!」

 

と強く言われた。

 

マサオ母「108君のお母さんに連絡をするから。」

 

俺「・・・・・・」

 

お母さんが来るまでの間、生きた心地がしなかった。

 

 

 

あの日を境に足を洗った

へと続く。

 

 

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