【52話】
今日は、風が強く吹いている。
台風が接近中だと、お天気キャスターが言っていた事を思い出した。
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当校には、サッカーコートが二面ある。
昼休みは、ゴールコートの争奪戦だ。
ゴールコートは、計4つ。
暗黙のルールで、6年生が三つ使用し、5年生が一つを使用する。
4年生は、あと1年待たないと使用できない。
・・・
6年生は、大きく分けると4つのグループに分かれる。
一つ目は、1組のナカタグループ。
二つ目は、2組のオカベグループ。
三つめは、3組のヒデキグループ。
そして、4つ目は、108軍団。
108軍団だけは、1組、2組、3組の連合軍になる。
とは言え、8人と少人数だ。
・・・
俺たちは、9割の勝率で、昼休みのゴールコートをゲットしている!
3クラス全てに108軍団のメンバーが居るから。
最初に給食を終えた組のやつが、ダッシュでゴールを取りに行けるからだ!
ただ、最近の勝率が低い。
それは、1組のタクヤとヨシダが一緒にサッカーをしなくなったからだ。
放課後、遊ばなくなったのが、原因だと思う。
何か一つを選択すると、失う物があることを実感した。
・・・
『全日本少年サッカー大会・埼玉予選』
いよいよ、6年生最後の大会が始まる。
最近の俺は、レギュラー組に入ることも増えてきた。
練習試合での話だけど、それでも試合に出れることが嬉しい!
ポジションは、右サイドバッグの時もあれが、右ウイングの時もある。
松山先生も迷ってるみたいだ。
俺がレギュラー組に選ばれる確率は、現時点で、五分五分。
この流れだと、地区予選に出れる可能性がある!
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『地区予選・1回戦』
スタメンは、全員6年生。
俺は、サブ組だった。
・・・
前半戦が終了。
スコアは、3対0。
そして、後半戦が始まる。
俺は、左ウイングで出場。
公式戦、初出場である。
めちゃ嬉しいけど、ドキドキが止まらない。
・・・
試合は、あっと言う間に終わり。
スコアは、7対0の圧勝だった。
俺の成績は、1アシストで、ノーゴールだった。
松山先生は、何も言わなかったけど、コーチは褒めてくれた。
・・・
1回戦を勝ち上がった俺らは、2回戦に進出。
地区予選は、トーナメント方式で、負ければ終わり。
また、来年の挑戦となる。
俺は、6年生なので、最初で最後の挑戦だ!
『2回戦・スタメン発表』
松山先生「1回戦の後半メンバーで行くぞ!」
おぉしゃぁー!!
初のスタメンだ!
・・・
俺は、フル出場した。
スコアは、4対1。
俺の成績は、2アシスト、ノーゴールだった。
・・・
俺は、家に帰り、武勇伝のように語った。
両親が喜んでくれたのが、とても嬉しかった!
俺「来週は、ゴールも決めるよ!」
父「じゃあ、ゴールを決めたら、焼き肉を食べに行こう!」
母「決勝戦は応援に行くから、ガンバってね!」
ミナツ「私も応援に行くから、お兄ちゃん、ガンバって!」
家族3人からエールを送られたのは、はじめてだった。
涙が出そうになったが、ぐっとこらえた。
・・・
俺は、寝る前にボールに話し掛けた。
トモオ君のサッカーボールに。
次は、ゴールを決めるから、俺を見守っていてと。
・・・
『3回戦・スタメン発表』
ゴールキーパーは、バフ。
センターバッグ、コクオ。
右サイドバッグ、108。
・・・
俺は、3回戦でもスタメンだった。
しかし、サイドバッグじゃ、ゴールが決められない。
アシストも出来るかどうか。
・・・
前半戦が終了。
スコアは、0対0。
3回戦のチームは、前年度に準優勝した古豪。
俺は守るのに必死で、アシストやゴールことは、すっかり忘れていた。
・・・
松山先生「後半戦も同じメンバーで行くぞ!」
「バッグは、守備を徹底し、絶対に1点もやるな!」
「フォワードは、チャンスがあれば、ロングシュートを狙って行け!」
・・・
試合が動かないまま、ロスタイム。
相手の蹴ったボールがコートの外に出る。
そのボールを拾った松山先生が、俺にボールを渡す。
松山先生も必死な表情だ。
先生「108、チャンスがあれば、攻めろ!」
俺「はい。わかりました!」
スローインからの俺へのリターン。
ライン際、前には一人しかいない。
俺は、そいつの右側にボールを蹴りだす。
ボールは、白線の上をギリギリで転がる。
そして、俺は左側から、そいつを抜く。
あのボールがラインを割らなければ、チャンスだ!
俺は、ラインを割ったかもしれない、ボールに触れる。
ラインズマンのフラッグは、上がらない。
俺は、そのままドリブルをする。
意表を突かれた相手は、誰も追いつかない。
ゴール前に残っていたセンターバッグが向かって来るが、まだ距離がある。
俺は、中を見るが、ナカタもヒデキも上がれてない。
逆サイドを見ると、マツシタが全力で駆け上がってるのが見えた。
俺は、マツシタがペナルティーエリアに入ったのを確認してから。
マツシタにパスを出した。
その瞬間、右足に衝撃が走る。
俺は、センターバックのスライディング・タックルで転倒した。
ボールは、思った所よりもゴール側に飛んでいる。
間に合わないか!?
マツシタは、ゴールに向かい飛んだ。
ボールは、マツシタの頭に当たり、ゴールへ吸い込また。
「ピッピッー」
審判の笛が響き渡る。
どっちだ!?
審判の指は、ゴールを指さしている。
選手は、飛んで喜んでいる!!
そして、試合終了。
へと続く。