50人に囲まれてリンチ
【54話】
孤独だった。
学校に俺の居場所は、なかった。
オジサンやリーマンも今や、チームヒデキだ。
俺って、こんなに嫌われていたっけ!?
考えてもしょうがないので、俺は考えるを止めた。
・・・
最近は、映画にはまっている。
きっかけは、再放送で見た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だ!
今までは、シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ジャッキーチェン、サモハンキンポー主演の映画が好きだった。
まぁ、いわゆる、アクション映画。
・・・
ここに来て、衝撃の1本に出会った!
俺は、アクション映画だけではなく、SF映画にはまっていった。
水金土日のロードショーは、欠かさず録画した。
日曜日になると、レンタルビデオ店で、見た事のない映画を借りた。
俺の部屋は、いつの間にか映画のポスターだらけになった。
・・・
両親は、ここ最近、カラオケにハマってる。
週末の夜は、もっぱらカラオケスナックに通っている。
趣味が高じて、カラオケ機器まで購入し、自宅で歌っている。
俺も、二人の影響で、カラオケを始めた。
気が付けば、演歌や歌謡曲を歌えるようになっていた笑。
・・・
最近は、家に居ることが多くなった。
以前と比べて、居心地も良い。
膝の調子も良くなってきたので、筋トレを始めることにした。
ホームジム・マルチマシンをお年玉貯金で購入。
59,800円の本気のマシーンで、毎日トレーニング。
リストウェイト、アンクルウェイトを装着し、サウナスーツを着てブッチーの散歩をするのが日課。
俺は、何を目指しているのだろう。
・・・
卒業式まで、残り1カ月。
谷あり、谷あり、谷ありの6年間だったけど。
中学生活は、楽しみたい。
・・・
昼休み。
タクヤ「108君、久しぶり」
ヨシダ「膝の調子はどう?」
こいつらと話すのも久しぶりだ。
「俺に何か用?」
タクヤ「相談したいことがあるんだけど、今日の放課後空いてる?」
俺「相談って何?」
ヨシダ「ちょっと、ここでは言いにくい事なんだ」
まぁ、暇だし、いいか。
「わかった。どこで話す?」
タクヤ「108君の教室まで行くから、授業が終わったら待ってて」
「おう、わかった!」
・・・
授業が終わり、待つこと10分、なかなか来ない。
しびれを切らせ、教室を出たところに、二人が現れた。
ヨシダ「108君、遅くなってゴメンね!」
タクヤ「・・・」
「まぁ、いいけど、どこで話す?」
タクヤ「公園で話そう」
・・・
公園に向かう道中、さえない表情の二人。
なんだろ?誰かに虐められてるのかな。
・・・
公園のベンチが見えてきた。
あの禁断のベンチには、座りたくない。
タクヤ「あっ、ちょっと待ってて!忘れ物を取ってくる」
タクヤは、公園から走って出て行った。
!?
俺「ヨシダ、話って何?」
ヨシダ「・・・」
俺「1組の連中に虐められてるのか?」
・・・
ヨシダ「108君、本当にごめんなさい!」
ドタドタ・・・
大勢で歩く足音が響く。
音の鳴る方に目をやると、ぞろぞろと公園の中に入って来る。
見た事のあるやつらだ。
先頭には、1組のナカタ、2組のオカベ、3組のヒデキ。
その後ろには、ハスダ、セキヤマ、タクヤがいる。
その後ろにも、その後ろにも、大勢の同級生が公園に入って来た。
ざっと見渡す限り、50人以上はいる。
もしかしたら、野郎全員か!?
後方には、オジサン、リーマン、マナブ、シンジ、ノリオもいる。
・・・
この頃の俺は、精神が崩壊していたと思う。
50人以上の野郎を見ても、恐怖心がない。
108軍団を見ても、心が傷つかない。
・・・
こいつら、俺を寄ってたかってリンチするのか?
それとも、各クラスのボスとのタイマンか?
いずれにしても、病み上がりの俺には、対抗できない。
・・・
2列目から、セキヤマがお決まりのヤンキースタイルで歩いて来る。
他の連中は、動いていない。
セキヤマの細い鋭角な眉毛と鬼ゾリは、いつ見ても迫力がある!
セキヤマ「おう!108。おまえ生意気なんだよ!やっちまうぞ!!」
顔の距離が近いし、煙草臭い。
その距離、約15cm。
・・・
このシーンもビーバップで見たことあるなぁ。
見た目は、ちょっと怖いけど、滑稽だ。
・・・
俺は、セキヤマの両肩を掴み、みぞおちに膝を入れていた。
セキヤマは、悶えながら腰を落とす。
透かさず、〇的に蹴りこむ。
セキヤマは、倒れのたうち回る。
これで、当分は、何も出来ないだろう。
・・・
「俺に何か用?」
誰かも返事がない。
・・・
俺「用がなければ、帰るから」
おぉ、この流れだと、この場から逃げられるかも。
俺は、公園の入り口に向かい歩いて行く。
しかし、入り口付近は、大勢いの野郎が道をふさいでる。
道を開けてくれないかな。
・・・
完全に囲まれた。
逃げ道がないって、こういうこと。
これは、リンチだな、痛そう。
・・・
遠くの方から、大人の声が聞こえてきた。
「おい!おまえら何をやっているんだ!!」
!?
次の瞬間、蜘蛛の子を散らすように、同級生たちは逃げて行った。
あっと言う間に広いいつもの公園に戻っていた。
ふと、振り返るとセキヤマだけ、逃げ遅れていた。
セキヤマは、俺を睨んでいる。
セキヤマ「108、覚えとけよ!」
定番の捨て台詞を吐いて、苦しそうに公園を出て行った。
・・・
疲れた俺は、ベンチに座る。
すると、一人の女子が、俺のもとに駆け寄ってきた。
「108君、大丈夫?」
・・・
へと続く。