100万円を渡した
【70話】
シン伯父さんと、おやじは双子。
一卵性双生児ということもあって、遠目から見たら、区別がつかないほど似ている。
・・・
彼女がいるってことは、離婚したってこと?
ミオとアイコは、まだ伯母さんと、あのアパートで暮らしているのだろうか?
聞きたいことはあるが、聞いちゃいけない気がする。
・・・
ユキ「108くん、ミナツちゃん。これからよろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!!」
「お父さんたちは、大事な話をするみたいだから、こっちで遊ぼっか」
伯父さんと両親は、リビングで何かを話し始めた。
・・・
遊ぶって!?和室には遊具が何もないし、綺麗なお姉さんと遊ぶのは、気まずい。
ミナツ「ユキさんは、かわいいし、お洒落だね!」
ミナツの性格は、明るくて、とてもお喋りだ。
ここは、女子同志、二人で盛り上がってくれると助かる。
ユキ「私、洋服のデザインの仕事をしてたし、お洒落が好きなんだ!」
女子会が始まったので、俺は漫画を読むふりをして、聞き耳を立ててた。
・・・
何でも、伯父さんとユキさんは、カラオケスナックで出会ったみたいだ。
仕事はファッションデザイナーで、趣味はカラオケと英会話。
学生時代に英検1級を取得して、スチュワーデスを目指していたけど、いろいろあってデザイナーになったみたいだ。
まぁ、ヤ〇ザな伯父さんとは、月とスッポンである。
真面目な女性が、悪い男を好きになる心理なのか!?
それとも、訳あり?
中1の俺には、不思議だった。
・・・
おやじもそうだけど、伯父さんも風呂上りは、パンイチで出てくる。
俺もだけど笑。
伯父さんの刺青は、迫力がある!
顔、ヒジ下、ヒザ下以外は刺青だ。
ちなみに、お爺ちゃんは、腕に刺青が入っている。
長男(伯父さん)は、腿にバラと何かの文字。
おやじも、腿にワンポイントの墨が入っている。
四男(伯父さん)は、不明だけど、たぶん入っている。
・・・
刺青は、この時代の流行りなのか!?
俺は、流行っても絶対に入れない!
なぜなら、刺青はカッコ悪いと小学時代に学んだからだ。
・・・
金太郎(お爺ちゃん)の家には、風呂がないから、銭湯に行くことが多い。
銭湯では、刺青を入れている人も、たまに見かける。
そこで、俺は衝撃的な刺青を見てしまった!?
女性の名前の下に命と彫られてる。
大好きな彼女や奥さんの名前だと思う。
俺は、その刺青を見て思った。
きっと、大好きだった時に勢いで入れたのだろう。
しかし、別れたらどうなる!?
そう、彼みたいになる!
彼は、刺青を二本線で、消しているつもりなのか!?
〇〇〇命に二本線って、名前が丸見えですけど笑。
予算の事情で、二本線を入れるのがやっとだったのか。
・・・
せめて四本線だったら、名前が分からなかったのに、非常に残念な大人だ。
その時は、良いと思っても、人の価値観は変わる。
刺青は、若気の至りで済まないことを、小学時代に学べた。
・・・
2週間くらいで、シン伯父さんとユキさんは、新居に引っ越した。
2DKの綺麗なアパート。
しかも、隣町の一等地。
社会的に信用がない伯父さんは、部屋を借りることが出来ない。
ユキさんも今は無職だから、借りることができない。
・・・
後から、母はぶつぶつ独り言のように俺に話してくれた。
母曰く、部屋はおやじの名義で借りたらしい。
現金も100万円、伯父さんに渡したらしい。
伯父さんの仕事は、おやじの知り合いの工場で働くことになった。
ユミさんは、これから仕事を見つけるらしい。
母「あの人は、100万円は貸したって言ってるけど、あのお金は戻って来ない気がするわ」
・・・
おやじは、人が好いところがある。
俺が幼稚園児の頃、会社の後輩の連帯保証人になって、大金を肩代わりしたみたいだ。
母「あのお金があれば、108が小学生になるタイミングで、引っ越しできたのにねぇ」
おやじが連帯保証人にならなければ、俺は虐められなかったのか!?
・・・
「あの人は、カッコつけなのよ!まぁ、困ってる人をほっとけない優しいところもあるけどねぇ」
・・・
間もなくして、伯父さんとユカさんは、籍を入れた。
・・・
へと続く。