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If you can dream it, you can do it.

とても、とても、悲しい話

【71話】

 

シン伯父さんが、お金がないのは一目瞭然だ。

 

俺が小学生の時、伯父さんは、外車のジャガーに乗っていた。

 

子供ながらに伯父さんは、金持ちなんだなって思った。

 

それが、今は『ホンダのトゥデイ』だ。

 

このトゥデイもユミさんの車だと思う。

 

なぜなら、クマのぬいぐるみが乗ってる、女子丸出しの内装だからだ。

 

察するに、財産を失い、組織から逃げて来たのだろう。

 

・・・

 

 

おやじと母も駆け落ちした過去がある。

 

当初は金がなかったので、親戚が探してくれた家賃1万5千円の風呂なしアパートで暮らし始めた。

 

家賃を払えない二人に親戚は3万円も貸してくれた。

 

親戚も貧乏だったけど、引っ越し祝いだと言って、中古のシングル布団一組と鍋を一つプレゼントしてくれた。

 

お金もない二人は、一袋のインスタントラーメンを鍋で煮て、そのまますすって食べてた。

 

親戚の給料日には『野菜とタマゴ』を親戚がプレゼントしてくれた。

 

これが、月に1回の贅沢だったみたいだ!

 

冬だったこともあり、一組の布団と毛布一枚だけじゃ、寒くてたまらない。

 

二人は温め合いながら、一組の布団と毛布一枚で冬を越した。

 

お腹の中に赤ちゃんがいるのに、とても過酷な環境だったと思う。

 

・・・

 

 

仕事は、親戚が紹介してくれた建設会社で働き始めた。

 

小さな建設会社だったけど、社長は給料を前借りさせてくれた。

 

ギリギリだったので、本当に助かった。

 

半年間は、親戚や社長にお金を返していたので、生きて行くのがやっとだったけど。

 

それ以降は、白いご飯と味噌汁が食卓に並ぶようになった。

 

・・・

 

しかし、真冬の過酷な貧乏生活が災いしたのか、お腹の赤ちゃんは流産してしまった。

 

とても、とても、悲しい話である。

 

母「おまえには、お兄さんがいたんだよ。お兄さんの分も一生懸命に生きないとね!」

 

俺は、兄の分も真面目に生きようと思った。

 

・・・

 

 

東京の伯父さん(長男)から電話があり、来週末、みんなで遊びに来いとお誘いがあった。

 

俺は、何度も東京の伯父さんの家に遊びに行っている。

 

しかし、シン伯父さんとユミさんは、東京が初めてだ。

 

タケミチとリョウジくんと会えるのも楽しみだ!

 

・・・

 

 

金曜日の夜、ホンダのトゥデイとマツダのルーチェで東京に向かう。

 

俺は、シン伯父さんのトゥデイに乗った。

 

伯父さん「おまえは、好きな子はいるの?」

 

クラスメイトだとタカエちゃんだけど。

 

タカエちゃんは、西小出身のコクオが好きだとか、付き合っているとか、最近噂がある。

 

コクオは、西小サッカー部のセンターバックだった男。

 

運動神経抜群で、勉強もできるイケメンだ。

 

・・・

 

入学当初は、少しだけモテていたのに、カオルに制服を破られた事件で、女子は俺と距離をとり始めた。

 

そもそも、頭が悪いやつは、運動神経が良いだけじゃモテない。

 

入学当初は、俺がバカなのを東小の女子は知らなかったので、勘違いしただけである。

 

・・・

 

ユウコちゃんとは、自然消滅だし。

 

リンちゃんには、返事をしていない。

 

そもそも、ちゃんと話したこともないし、好きだという感情はない。

 

かわいいと思うのは、児童養護施設のアオイちゃん。

 

そして、元カレが俺似のマリちゃん。

 

最近、悪女ナオエも少し気になっている。

 

・・・

 

「いないよ!」

 

伯父さん「俺の初彼女は、中一だっぞ!」

 

ユキさん「私は小学生の時だよ!」

 

伯父さん「えっ!おまえませてるな」

 

伯父さんが、少し動揺している。

 

・・・

 

伯父さんとユキさんの話は、面白い!

 

友達感覚で話してくれるし、大人の話をしてくれるので、どれも新鮮だった。

 

・・・

 

伯父さん「着いたみたいだな!?」

 

・・・

 

 

 

二人の警備員が走って向かって来る

へと続く。

 

 

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