思い出のロビンソン・クルーソー
【87話】
クリスマスイブ当日。
なんだかんだあったけど、アオイにマグカップをプレゼントできる!
今日のプランは、こうだ!
午後12時:コージーコーナーで待ち合わせ。
コージーコーナーで、クリスマスケーキを購入。
午後1時:カラオケボックス。
カラオケを1時間ほど歌う。
午後2時:クリスマスケーキを食べる。
そのタイミングで、クリスマスプレゼントを渡す。
午後3時:クリスマスパーティー終了。
アオイの家まで送る。
オプションとして、最低でも『B』、可能であれば『C』まで持って行きたい。
まぁ、これは、ただの願望だ!
・・・
コージーコーナーで待っていると、アオイが現れた。
「108くん、お待たせしました!」
「俺も今来たところだよ!」
あれれ!?
今日のアオイの服装は、普段より大胆だ!
メチャ寒いのに露出度が高い!!
アオイと家は、エタニティ。
いい香りがする。
これは、もしかしたら、今日、いけるかも!?
・・・
俺たちは、コージーコーナーで、生クリーム苺デコレーションケーキを購入した。
思っていたより、高額だった!!
今日の軍資金は、15,000円。
俺のお小遣いの月額が1,500円。
オプションとして、オヤジの車を洗車すると500円。
庭の雑草を刈ると500円。
しかし、冬はほとんど雑草が生えない。
・・・
小遣いだけだと、月2回のミスドのデート代で終わる。
そんな俺が、なんで15,000円の軍資金があるかって言うと。
年に2回、お年玉とお盆休みに大金がもらえるからだ!
お爺ちゃん&お祖母ちゃん&伯父さんたちから、それぞれ、5,000円~10,000円。
中学生になってからは、年間の総額は10万円くらい。
その半分は母に預け、残りの半分は俺のが管理している。
小学生の時は、ほとんどが没収だったけど、中学生になったら、ルールが変更された。
従って、俺の使えるお金は、10万円くらいある。
ちなみに10万円は『ロビンソン・クルーソー』の本の中に隠してる。
ロビンソン・クルーソーは、思い出の本。
俺は、小学1年生の時にダンプカーにはねられた過去がある。
そのダンプカーの運転者(ヤマモトさん)が、俺にプレゼントしてくれた本。
それが、ロビンソン・クルーソーだ!
残念な話だけど、そのおじさんは、交通事故から4年後に亡くなってしまった。
しかも、交通事故で・・・
・・・
ヤマモトさんは、ヤマモトポ〇プと言う会社を経営していた。
俺は、そのヤマモトポンプのダンプカーにはねられて、生死を彷徨った苦い経験がある。
ヤマモトさんは、何度もお見舞いに来てくれた。
退院してからも、家までわざわざ退院祝いを持って来てくれた。
ロビンソン・クルーソー以外にも、宝島の本も頂いた。
毎回、ケーキや果物も買ってきてくれた!
ちなみに子供の頃は、甘いものが好きだった。
・・・
その時、ヤマモトさんには、俺の一つ年下の女の子がいると聞かされた。
ヤマモトさん「同じくらいの子供の親として気持ちはわかります。本当に申し訳ございませんでした!!」
ヤマモトさんは、涙を浮かべて、何度も何度も俺の両親に謝っていた。
俺は、7歳になったばかりなので、そのことの意味があまりよくわかっていなかった。
・・・
4年生になると、ぼろアパートから、新築一戸建て引っ越した。
登下校中、とても気になる店の前を通る。
そこには、トラックが数台並んでいる。
トラックの車体には『ヤマモトポ〇プ』の文字が・・・
あれ!?ヤマモトポ〇プ店って聞いたことがあるぞ?
なんだっけ?
俺は家に帰り、母に聞いてみた。
母「おまえが交通事故にあった時に運転してたのが、ヤマモトポ〇プ店の社長だよ。確か三年生に女の子がいるはずだよ!」
俺の記憶が蘇ってきた!?
4年生の俺の心は、崩壊寸前だった。
今であれば、ヤマモトさんが悪いわけじゃないことは、心でわかる。
でも、幼かった俺は、ヤマモトさんを恨んだ!
3か月も入院したせいで、高額な入院費がかかり。
そのせいで、俺の家は貧乏家族。
俺は、いじめの対象になり、地獄を味わった。
しかも、腰や足に傷が残り、その傷がコンプレックスになっていた。
・・・
そんな、ある日の登下校中。
ヤマモトポ〇プ店の前を通ると、玄関から女の子が出てきた。
あっ!山本の娘だな!!
俺は、女の子に声を掛ける。
「俺は、おまえのオヤジに殺されそうになったんだぞ!いまだに身体も傷だらけで、凄く辛い思いをしているんだぞ!おまえのオヤジは犯罪者だ!」
女の子は、ビックリした顔で、俺の顔を見る。
・・・
そして、女の子は泣いてしまった。
俺は、居心地が悪くなり、その場を去った。
・・・
この頃の俺は、全てに対してムカついていた!
女の子を泣かせたことに対しても罪悪感がなかった。
・・・
それから、1年後。
母「ヤマモトポ〇プ店のヤマモトさん、昨日、交通事故にあって亡くなっちゃったみたいだよ。可哀そうにね。おまえのお見舞いも何度も来てくれた優しい人だったのにねぇ。あの後、1年くらい仕事が出来なかったみたいだよ。」
俺「なんで、仕事ができなかったの?」
母「詳しくは、わからないけど、免許が停止になって仕事が出来なくなったみたいだよ。ワンマン社長だったから、代わりのドライバーもいなかったし、数カ月間の営業停止にもなっていたみたい。まだ小さい女の子がいるのにねぇ。本当に大変だったと思うよ!」
俺は、とても、後悔した。
なんで、あんな酷いことを言っちゃったんだろう。
・・・
俺「ヤマモトさんのお通夜に行きたいけど、行ってもいいかな?」
母は、キョトンとした表情だ。
・・・
母「わかったわ。一緒にお別れに行こう!」
・・・
To BE CONTINUED🔜