末吉と大吉
【108話】
タキタは、リンちゃんの横に並び歩き始めた。
残された俺とマドカちゃんは、二人の後ろを追う。
マドカちゃんは、本当に俺のことが好きなのかなぁ?
彼女の顔をチラ見すると、赤ら顔。
寒いからなのか、それとも、露店の明かりが反射したかは不明。
マドカちゃんも意識をしているのか、沈黙が続く。
・・・
「108くん、志望校は決まってるの?」
「○○工業だけど、マドカちゃんは決まってるの?」
「実は、まだ迷ってるの・・・」
「そうなんだぁ~。ちなみに何処と何処で迷ってるの?」
「服飾の専門学校にするか、○○高校にするか迷ってる。でも、108くんが○○工業に行くんだったら、私も同じがいいかも~」
これは、アプローチなのか!?
それとも、冗談なのか!?
マドカちゃんと殆ど話したことがないので、言葉の真相が分からない。
「服飾の専門学校って洋服の学校ってこと?」
俺は、彼女のトークを一部スルーした。
・・・
「そうだよ。服飾の専門学校は、二年間だから、早く就職できるし、私にとっては好都合なんだよねぇ~」
リン「108君とマドカちゃんもタコ焼き食べる?」
「俺は食べるけど、マドカちゃんは、食べる!?」
「私は、1個だけ食べれれば、良いかなぁ~」
「じゃあ、俺のを1個あげるね!」
「うん。ありがとう!」
・・・
「おい!おまえら、タコヤキは止めて、お好み焼きにしろ!?」
声のする方向を見ると、そこにいたのは、カオルだった。
7人のヤンキー筆頭のカオル。
俺の学ランを破いて、みんなの前で恥をかかせたカオル。
もう、二度と会いたくないヤツに会ってしまった。
タキタ「チワース!カオル先輩、ご無沙汰しています!」
「おう!おまえら、食べるんだったら、俺のお好み焼きにしろ!」
「向こう側が、俺の店だから、絶対来いよ!108もな!?」
カオルは、テキヤもやってるみたいだ。
ヤ〇ザってテキヤもするのか!?
・・・
タキタ「俺、付き合いで、お好み焼き買って来るわ~。108も行くよな!?」
リン「私は、絶対にタコ焼きにする!」
「俺は、アイツ嫌いだから、行かないよ!」
・・・
「そうか、じゃあ、俺が二つ分買って来るよ~」
俺「すいません。タコヤキ一つ下さい!」
俺とリンちゃんは、タコヤキを買った。
「はい!マドカちゃんもどーぞ!」
俺たちは、ハフハフしながら、タコ焼きをほおばった。
・・・
タキタ「参ったよ!四つも買わされちゃったよ!?」
「マジか!?えげつねぇなぁ!半分、俺が払うよ」
マドカ「私も一つ頂くね!タキタ君、いくらですか?」
結局、俺たちは、食べたくないお好み焼きを買わされることになった。
しかも、このお好み焼き変な味がするぞ!?
俺たちは、一口ずつ食べて、ごみ箱に捨てた。
タキタ「噂だけど、カオル先輩のテキヤのキャベツは、1年前の物を使用してるみたいだぞ!?今日、このお好み焼きを食べて実感した!あの噂は本当だったんだ!」
リン「本当に!?1年って腐っちゃうよね?」
「それが、売れ残りの野菜は、冷凍してるみたいなんだ!?」
マジかよ!?食中毒になったら、どう責任とるんだよ。
真面目に働けコノヤローと思ったが、口には出さなかった。
・・・
リン「ねぇ、おみくじ引かない!?」
タキタ「おぉ、いいね~!みんなで引こうぜ!」
マドカ「いいねー!みんなで一斉に開こうか!?」
あまり、興味がないけど、俺は流れに乗った。
・・・
そして、俺たちは、おみくじを一斉に開いた!?
「せーのっ!」
リンちゃん、末吉。
タキタ、中吉。
マドカちゃん、小吉
俺は、大吉だった。
興味がなかったけど、少しだけ嬉しい。
リン「いいなぁ、108君。私のと交換してよ~」
「いいよ~!俺、末吉が欲しかったんだよね。交換しよう!」
俺は、リンちゃんのジョークに乗ってあげた。
「ありがとう!じゃあ、108君に末吉あげるね!」
って、おい!?マジで交換するんかい!
まぁ、別に良いかぁ。
「いいなぁ、リンちゃん。私も欲しいなぁ~」
って、おい!?おみくじは交換するもんじゃないぞ!
タキタ「マドカちゃん、俺のと交換する!?」
マドカ「やだよ!タキタ君、小吉じゃん!私の方が良いから、交換はできませんっ!」
こんな会話をしているのは、日本中探しても、俺たちだけだろう。
それでも、今日一で盛り上がった瞬間だった!
・・・
少し早いけど、俺たちは、小銭を賽銭箱に投げてお祈りをした。
マドカ「108くんは、何をお願いしたの?」
「俺は志望校に受かりますようにって、お願いしたよ!」
「108くんだったら、きっと受かるよ!」
「ありがとう!マドカちゃんは、何をお願いしたの?」
「私はね。・・・ナイショだよ!?」
俺は、ドキッとした!?
そう、今のマドカちゃんの仕草が、めちゃ可愛かったし、なんだか和んだ。
To BE CONTINUED🔜