フォアローゼスとHIPS
【122話】
高校に入学してから三週間経つが、カオリに会っていない。
このままだと自然消滅してしまう。
カオリからは、日曜日の夜に電話がかかって来ることが多い。
以前は、俺から電話をすることが多かったが、カオリのオヤジが苦手で、最近は俺から電話することは殆ど無くなっていた。
電話越しで、俺らの関係性を毎回聞いて来るカオリのオヤジ。
何回説明すれば、わかるんだよ!?
そんな理由で一カ月以上も俺から電話をしてない。
・・・
オヤジと話さない方法は、何かないのか!?
考えた結果、ポケベルを持つことをカオリに提案した。
カオリは、快く受け入れてくれた。
ポケベルは便利なツールだった。
「0840」(おはよう)
「0833」(おやすみ)
「14106」(愛してる)
「49106」(至急TEL)
「999」(サンキュー)
「86」(ハロー)
これだけ覚えれば、簡単なコミュニケーションが取れるし、お互いのタイミングで電話ができる。
俺たちは、頻繁に連絡を取るようになり、ポケベルが手放せないアイテムとなった。
・・・
一カ月以上ぶりにカオリに会うことになったが、気が乗らない。
カオリの地元の駅前で持ち合わせした。
あれはカオリかな!?
でも、ちょっとケバい気がするぞ。
「どーしたの!?髪キンキンだね~」
・・・
「108はパーマかけたんだね~」
そう、俺は人生の初のパーマをかけた。
パーマ名は『アイパー』。
仲村トオルの髪型を真似てみたが、明らかに失敗である。
・・・
アイパーをかけた次の日の朝。
「108ちゃん、その髪型は仲村トオルじゃなくて、チャゲアスのチャゲじゃんか!?」
俺も何か違うと思っていたけど、タケヨシに突っ込まれて大失敗だと気づいた。
タケヨシに教えてもらった激安のパーマ屋のせいである。
「お前のお勧め店だぞ!バカヤロー!!せめて飛鳥が良かったよ!」
パーマ代は四千五百円と激安だけど、腕は相当悪かった。
「もう二度と行くかあんなクソ店!?」
「あのパーマ屋は店主より、バイトのにーちゃんの方が上手いのよ!言わなかったっけ!?」
「聞いてねーよ!?まぁ次行くとしたら、絶対ににーちゃんを指名するよ!」
・・・
「初パーマ失敗しちゃったよ。店主に起こされて鏡を見た時、これは夢だと思ったよ!?」
「そうかな~!?似合ってると思うよ!カオリも失敗しちゃったよ。日に日にパツキンになって行くしケバいよね??」
カオリもって、やっぱり、俺のアイパー失敗だと思ってるな。
・・・
「そんなことないよ。イタリア人みたいで素敵だよ!?」
俺はカオリに対して初めてお世辞を言った。
アイパー失敗男とパツキン女、はたから見たらとても目立つカップルだ笑。
・・・
俺たちは、喫茶店でランチしてから、カラオケボックスに向かった。
「108って何を歌うの!?」
「そーだな。スナックだと演歌だけど、カラオケではB'zかチャゲアスかな~」
「えぇっ!?108ってスナック行くの?しかも、演歌ってオヤジじゃん。渋すぎるでしょ~」
「たまーにオヤジと伯父さんと行くよ!そうそう、スナックでバーボンウイスキーを覚えたけど、カオリは飲んだことある!?」
「カオリはフォアローゼスが好き!」
飲んだことないと思ったのに即答かよ。
ところで、フォアローゼスって何だろ!?
やっぱり、カオリは俺より大人だ。
「へ~。フォ、フォアローズね!?いいよね。・・・ちなみに俺は『HIPS』が好き!!」
「じゃあ、今日はお酒を飲みながら歌っちゃおうか!?」
「いいね~!!」
俺たちは、酒屋でフォアローゼスを買って、カラオケボックスへ。
カオリが酔ったら、どうなるのか楽しみだぁー!
カラオケに着くと、日曜日の昼過ぎだということもあり混んでいる。
俺たちは、受付を済ましベンチで順番待ちをする。
「そうだ!カオリ、工藤静香を歌ってよ!」
カオリは、工藤静香に似ている。
そう、カオリの雰囲気と顔が俺の中でのストライクなのだ!!
「え~。いいけど。108は演歌を歌ってね!?」
演歌なのかーい。・・・
久々のカオリとのデート、とても楽しー!
・・・
「あれ!?カオリじゃねぇ??」
俺たちが振り向いた先にいたのは、ヤンキー3人組だった。
・・・
To BE CONTINUED🔜