放課後の屋上に呼ばれた
【76話】
今の俺には、二年最強とかどうでもいい話だけど、いずれ呼ばれる運命だということは分かっていた。
俺は、喧嘩に負けたことが二回ある。
一つは、不意打ちとはいえ、コジマにOKされている。
もう一つは、小三の時、同じクラスのミノルに一発も当てることが出来ないまま完敗している。
・・・
登下校中、些細なことで俺がキレてミノルに殴りかかった。
ミノルは、俺のパンチを全てかわして、俺の顔にジャブを入れる。
何度も攻撃したが、最終的にはジャブからのストレートで倒された。
たぶん、あれは、カウンター攻撃。
ミノルはディフェンスだけじゃなく、パンチがほとんど見えなかった。
完敗である。
・・・
後から聞いた話だけど、ミノルの家はボクシングジムをやっていて、ミノルは幼少の頃からボクシングをしていた。
その実力は、地区大会で優勝したことがあり、プロボクサーになるのが夢みたいだ。
・・・
小三の喧嘩以降、俺はミノルと関わっていない。
普段のミノルは大人しく、喧嘩もしないタイプだったので、俺はあまり気にしたことがなかったが、5~6年の時、オカベとつるんでいた記憶が少しだけ残っている。
・・・
俺は、入学式以来、喧嘩をしていない。
喧嘩が日常茶飯事だった俺が、一年もしていない。
その間、ヤンキーたちは実戦で強くなっている!?
今、喧嘩したら俺は、ヤンキーたちに勝てるのか?
・・・
朝の教室。
ケンジ「昨日の喧嘩だけど、ヒデキ君がセキヤマ君に鼻の骨折られたって!俺も詳しくわからないけど、不意打だったみたい!?」
ヒデキは嫌なやつだけど、鼻が折られたのは同情する。
・・・
ケンジ「そろそろ、108が呼ばれるかもな?」
「俺は興味ないし、呼ばれても行かないよ!」
パチオ「だよな!セキヤマは木刀を所持してるみたいだし、行かない方が良いよ!」
・・・
ケンジ「次のターゲットは、マッチャンだって噂だぜ!」
パチオ「元子分たちにマッチャンは裏切られるのか?でも、マッチャンをやったらヤ〇ザが出て来るよな!?」
ケンジ「どーかな?子供の喧嘩にオヤジが出てくるか!?」
パチオ「普通、中学生の喧嘩にヤ〇ザは出てこないか!」
・・・
次の日の朝。
ケンジ「昨日、マッチャンが便所でボコられたって!セキヤマ君、シュンイチ、マツオ、オオヤマ、リュウジ、ハスダの6人でリンチだってよ。マッチャンの顔ボコボコだったよ!」
リュウジは、シュンイチ、マツオと同じマッチャンの元子分。
なんでも、リュウジのオヤジもヤ〇ザで、カオル先輩のオヤジの組の幹部みたいだ。
・・・
俺「それにしても、やつらの裏切えげつないな。しかもリンチって!タイマンじゃないのかよ!?」
パチオ「マッチャンは仕返しするのかな?」
ケンジ「二年単独だったら、リベンジするだろうけど、カオル先輩がバックについてる可能性もあるから、リベンジしたくても出来ないかもな!?」
・・・
キザ男ハスダは、中学デビューしていた。
髪型はソリコミ&サイドバック。
短ランにドカンを履いている。
1年の3学期、ナオエと付き合ってる噂があった。
変わらず、女子にはモテているようだ。
俺は小四の時、ハスダ兄に木刀でボコられてる。
嫌な思い出だ。
しかし、俺にやられた同級生は、中学デビューしても、今のところ俺に仕返ししてこない。
・・・
放課後、教室を出ると懐かしいやつに声を掛けられる。
ヨシダ「108君、久しぶり!」
元108軍団のヨシダだ。
「タクヤにイー・アル・カンフー貸してたよね?」
ぶっちゃけ、覚えていない。
俺「そうだっかなぁ?」
最近、ファミコンやってないから、これも覚えていない。
俺「借りていたかも?家に帰ったら確認してみるよ!」
ヨシダ「明日、持って来てもらっても良いかな?」
俺「わかった!ところでタクヤは?」
「タクヤ、108君に会いにくいって言ってて、俺がタクヤの代行」
・・・
あっ!思い出したぞ!?
ヨシダとタクヤに呼ばれて公園に行ったら、50人に囲まれたことを。
「明日の放課後、屋上で108君に借りたイー・アル・カンフー返すね!」
これは、罠だな。
・・・
俺「昼休みで良くねえか?」
ヨシダ「実は、タクヤも俺もあの日のことを108君に謝ろうと思っていて。明日の放課後、屋上で待ってるね!」
そう言い残し、ヨシダは走ってその場を去って行った。
・・・
俺に謝る!?
その可能性もなくはない。
俺がやつらの立場だったら、謝ると思う。
でも、俺だったら、最初から裏切らないし。
マッチャンもトイレに呼ばれて、リンチされたばっかりだし。
やっぱり、騙されているよな。
どっちだろう?
でも、屋上に行ってみて罠だとわかったら、逃げればいいのか。
俺、足速いし。
・・・
翌日、俺はアイスクライマーを持って屋上へ行く。
へと続く。