寂しい別れ
【112話】
始発のバスに乗り、カオリが俺の町にやっていた。
正確に言うと、カオリは俺の町をバスで通過するだけ。
俺は最寄りのバス停から、バスに乗り込む。
「良かったよ~。108が乗ってこなかったどうしようと思ったよ!」
「カオリは大袈裟だなぁ~。乗り遅れないように15分も前からバス停で待っていたよ!」
そう、今日は俺とカオリの卒業旅行。
日帰りなのが少しだけ残念だけど、カオリと1日一緒に過ごせるのは嬉しい。
駅に着き、ディズニーランドまでの切符を購入した。
「108、忘れずに第二ボタン持って来てくれた!?」
「うん、どうぞ!俺の第二ボタン」
「ありがとう!でも、本当にこれ第二ボタン!?」
「えぇっ!?な、なんで?」
カオリは、鋭いところがある。
見てないようで、人のことを良く見ている。
「だって、第二ボタンに付いてる裏ボタンが第三ボタンの裏ボタンだよ!?」
俺も忘れていたが、俺の裏ボタンは、5つとも異なる。
カオリは、いつの間にか裏ボタンまでチェックしてたんだ!?
俺は、あたふたしながらも、何とか誤魔化した。
「まぁ、そう言うんだったら、信じよう。ところで、卒業式に108のボタンをもらいに来る人はいなかったの!?」
カオリは、俺の卒業式を覗いてたのかと言うくらい、的確に指摘をしてきた。
「俺がボタンを渡したのは、カオリだけだよ!」
俺は、嘘をついてしまった。
カオリは、怪しんでいたが、それ以上のツッコミはなかった。
・・・
ディズニーランドでは、カオリに合わせて乗り物に乗ったり、食べたい物を食べた。
嘘をついたせめてもの償い。
「エレクトリカルパレード見たかったけど、そろそろ帰らないとね!?」
「あぁ、もうこんな時間か!?高校生になったら、今度は泊りで来よう!」
「うん。そーしよ~。絶対に約束ね!」
・・・
俺たちは、出口に向かったが、混んでいるのと土地勘がないので、なかなか出口に辿り着かない。
しかも、トイレに行きたくなった俺たちは、トイレに寄る。
男子トイレは混んでなかったが、女子トイレは渋滞だった。
また、乗り継ぎが悪かったのと、途中で人身事故があり、更に大幅に帰りが遅くなってしまった。
そして、バス乗り場がある駅に着いた時は、もう20時を過ぎていた。
「帰りのバスは、20:23だね。カオリは大丈夫?」
「うん。家に電話してくる」
・・・
「お母さんが、駅まで迎えに来てくれるって!」
20:18のバスに乗り、俺は30分後に下車する。
そこから、カオリが住む町の最寄り駅まで、約40分もかかる。
カオリが到着するのは、21:30を過ぎてしまう。
・・・
俺たちは、バスに乗り込み、たわいもない話をしていた。
「ところで、108は高校では何部に入るの?」
一瞬、ドキッとしたけど、嘘をついても仕方がないので、ラグビー部に入ることを伝えた。
「○○工業高校のラグビー部ってかなり強いよね!?」
「良く知ってるね!?前回は準優勝だったから、今年は優勝を狙ってるみたいだよ!スポーツ推薦でも全国から優秀なラガーマンがたくさん入部するって噂だし、俺も今から楽しみだよ!」
・・・
「そんな強豪校のラグビー部に入部したら、108の休みはないよね!?」
「うん。でも、時間を作ってカオリに会いに行くから。あ、ごめん!?ここだから降りるね」
変なタイミングで、最寄りのバス停に着いてしまった。
別れ際のカオリの表情は、とても寂しく見えた。
・・・
To BE CONTINUED🔜