中学校の門前~待ち受けていたのは
【56話】
春休みのある日、俺は妹のミナツと家で留守番をしていた。
静かな午後、家の中は穏やかで、テレビの音だけが響いていた。
「プルルルル、プルルルル」
突然、電話の着信音が鳴り響いた。
普段はあまり電話が鳴らないので、少し驚いた。
俺は電話を取り上げ、耳に当てた。
「もしもし、○○です」
「108君いますか?」
「俺だけど、誰?」
「ナカタだよ」
ナカタが俺に電話をかけてくるなんて、珍しいことだ。
何かあったのか?
「どーしたの?」
「これから出てこれる?」
卒業したばかりの俺たち。
もしかして、リンチのリベンジか?
「えっ、なんで?」
ナカタはやや緊張した声で続けた。
「先輩から呼び出し食らって、108も連れて来いって言われちゃって」
「先輩って誰?」
「俺もオカベから電話があって。誰だかわからないんだよ」
「行かないとダメなの?」
「来なかったら、中学でボコボコにされるってよ!」
「マジかよ。行きたくねぇな」
「じゃあ、30分後に中学校で待ち合わせな」
電話を切った後、俺はミナツに「ちょっと出かけてくる」と言い残し、急いで準備を始めた。
心の中では、不安と恐怖が交錯していた。
中学校に向かう途中、春の風が肌を撫でる。
桜の花びらが舞い落ちる中、俺の心は重かった。
中学校に着くと、ヒデキもすでに待っていた。
彼の顔にも不安が色濃く浮かんでいる。
「呼ばれたのは、ナカタ、オカベ、ヒデキ、俺の4人か」と俺は確認するように言った。
ヒデキがオカベに尋ねた。
「オカベ君、誰が俺たちを呼んだの?」
オカベは困惑した表情で答えた。
「俺もわからない。聞いた事のない奴から電話があって、中学校まで4人で来いって言われた」
校門で待つこと5分。
向こう側から、学ランを着たヤンキーが歩いて来る。
「おい! おまえらか!?」
誰!?
ソリコミ、キンパツ、タンラン、ボンタン。
バリバリのヤンキーなのは、わかるけど誰?
3人の反応から見ると誰も知らないみたいだ。
「俺は、2年のシロヤマだ! お前ら、俺の後を付いて来い!」
俺たちは、シロヤマの後を自転車で追いかける。
シロヤマは何も言わず、ペダルを回す。
もう20分は走っている。
見たことのない景色だ。
俺たちの小学校は町の西側にあるが、向かっているのは東側だ。
シロヤマは東小出身だということが分かった。
中学校を出て30分、族車が置いてあるプレハブ小屋前で止まった。
そこには、族車や改造された原チャリが停まってる。
『湘南爆走族』で見たことがあるぞ!?
シロヤマがプレハブ小屋のドアを開ける。
嫌な予感しかしない。
部屋の中には、6~7人のヤンキー。
煙草の煙で、顔が良く見えない。
ソリコミ、パーマ、キンパツ、タンラン、ボンタン、アンパン!?
が見えてきた。俺は、最後に部屋に入る。
ソリコミパーマ「おう!コイツが108か!?」
「そう、コイツだよ!」
そこに居たのは、クロタニだった!?
ソリコミパーマ「おまえら、突っ立ってなくて、座れよ」
俺たちは、座った。
クロタニ「108は、正座な!」
クロタニは、バリバリのヤンキーになっていた。
クロタニは、かつてボコボコにして池に落とした1個上の先輩だったが、今やバリバリのヤンキーになっていた。
へと続く。