108 Blog

If you can dream it, you can do it.

天上天下唯我独尊

【60話】

 

俺の最初の友達は、クワタ。

 

席が後ろだったので、自然と仲良くなった。

 

見た目も性格も素朴。

 

東小出身だけど、誰ともつるまない。

 

クワタも友達がいないのかもな。

 

・・・

 

 

放課後、クワタが話し掛けてきた。

 

「今から、俺ん家に遊びに来ない?」

 

断る理由もないので、クワタの家に行くことにした。

 

学校から、自転車で20分くらいで、クワタの家に着いた。

 

建物が大きくて、庭も広い。

 

庭には、遊具まである。

 

家って言うよりは、何かの施設みたいだ。

 

クワタ「俺ん家、児童養護施設なんだ」

 

俺「児童養護施設って何?」

 

クワタ「実は、俺には親がいない。そんな子供たちが共同生活するところだよ」

 

俺は、そんな施設があることを今まで知らなかった。

 

・・・

 

その日は、施設で暮らす小学生も合流して、みんなでサッカーを楽しんだ!

 

「みんなー、お茶はいったよー!」

 

寮母さんみたいな人が麦茶を出してくれた。

 

俺たちは、食堂で麦茶を飲みながら、いろいろなことを話した。

 

・・・

 

「ただいまー!」

 

振り向くと、俺と同じくらいの年のかわいい女の子が立っていた。

 

クワタ「108君、紹介するね。この子は、アオイちゃん。俺たちと同じ、中一だよ」

 

アオイ「アオイです。108さん、よろしくお願いします!」

 

俺「108です。アオイちゃんは、何組なの?」

 

アオイ「4組です。108さんは?」

 

「クワタ君と同じ、1組だよ」

 

「そうですか、クワタ君と仲良くしてあげてくださいね!」

 

アオイちゃん、にっこり笑って、行ってしまった。

 

・・・

 

俺「ここって、女子も一緒に住んでるの?」

 

クワタ「そーだよ。それがなに?」

 

あんな、かわいい女子と一緒に住めるって、少し羨ましいと思った。

 

・・・

 

 

入学後、2週間以内で、部活を決めなくてはならないルールだ。

 

見学にも行けるが、リスクがある。

 

放課後、校内をうろつくと7人のヤンキーに会う可能性があるからだ。

 

・・・

 

本音は、サッカー部に入りたい!

 

松山先生やトモオ君の思いにも答えたい。

 

・・・

 

だけど、クロタニとシロヤマがいるサッカー部は、生き地獄だ!

 

柔道部からも、オファーがあったけど、2年間も投げられ続けるのは、もっと嫌だ!!

 

・・・

 

帰宅部も考え、先生に聞いてみた。

 

先生曰く、中学の部活は、特別な理由がない限り、強制参加である。

 

どーしよう!?

 

・・・

 

 

そもそも運動部が少ない。

 

テニス、野球、陸上、バレーくらい。

 

バスケ部があれば、バスケ部に入りたかったけど、何故かない。

 

・・・

 

文化部は問題外。

 

テニスやバレーは、何か違うなぁ。

 

陸上は得意だけど、地味だよなぁ。

 

消去法だと野球になるが、俺の中でのイメージが悪い。

 

おやじは『読売巨人軍』の大ファンだ!

 

そして、家でのチャンネル権は、天上天下唯我独尊おやじだ。

 

従って、俺やミナツが見たいテレビ番組は見れない。

 

・・・

 

どれだけ、巨人戦の放送するんだよ!

 

俺は、野球と巨人が嫌いになっていた。

 

・・・

 

まぁ、でも、まだ、1週間もあるし、ゆっくり考えよう。

 

・・・

 

 

今日も、おやじは晩酌しながら、巨人戦を見ている。

 

母「中学の部活は、何にするか決まったの?」

 

「まだ決まってないけど、陸上か野球かな?」

 

・・・

 

父「じゃあ、野球にしたらいい!野球だったら、教えてやるよ!」

 

おやじのテンションが急に上がった!

 

おやじは、社会人野球をしていて、チームキャプテンでもある。

 

まぁ、生粋の野球オタクってやつですよ!

 

・・・

 

おやじが、野球を熱弁する。

 

・・・

 

父「とりあえず、明日キャッチボールをしよう!」

 

俺は、乗り気じゃなかったけど、とりあえず返事をした。

 

・・・

 

 

翌日の夕方、家の前でおやじとキャッチボールをした。

 

まずは、ボールの握り方を教えてもらった。

 

なんだ、この持ち方は、めちゃ持ちにくい。

 

・・・

 

 

最初は、ノーコンだったけど。

 

少しずつ、おやじの構えるグローブに、ボールが飛ぶようになった。

 

父「ナイスボール!!」

 

おやじがやたらと褒める。

 

俺は、おやじから褒められた記憶がない。

 

勉強できない、喧嘩ばかりしている、警察沙汰も多数あり。

 

褒める要素がない。

 

・・・

 

俺が活躍したのは、運動会とスポーツ際くらいだ!

 

だけど、おやじに賞状を見せても、喜んでいるのか微妙だった。

 

運動会も見に来たことがないし、俺にあまり興味がないのだろう。

 

そんな、おやじが、この日だけは、褒めまくってくれた!

 

父「野球部に入るのであれが、道具一式、全部買ってやるぞ!」

 

親父が畳みかける。

 

・・・

 

親父も喜んでるし、野球部にしよう。

 

 

 

チワース!チワース!チワース!

へと続く。

 

 

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