静かな夜に照らされる別れの光~ヤマモトポップ店のお通夜
【88話】
夜は静かに、ヤマモトポップ店の灯りだけが辺りを照らしていた。
この光が、今夜のお通夜会場へと導く。
俺と母は、手を取り合いながら、その光へと歩みを進めた。
心は重く、足取りは鈍い。
でも、これが俺たちにできる最後のお別れだ。
この小さな町で、ヤマモトさんはただの店主ではなかった。
彼は、人々の心に寄り添う存在で、いつも暖かい笑顔で迎えてくれた。
そんな彼の突然の訃報は、町中に深い悲しみをもたらした。
列に並びながら、俺はふと、前方にいる女の子とその母親の姿に目を留めた。
ミユキちゃんだ。
彼女は、まだ小さな肩を震わせながらも、涙を堪えようとしていた。
その姿に、心が締め付けられる。
「この度は、ご愁傷様です。…」
母がそっと声をかける。
その言葉に、俺も何かを伝えたい。
だけど、どう伝えていいか、わからない。
ただ、ただ、申し訳なさが心を覆う。
ミユキちゃんがこちらを見た。
その目は、俺を責めているようにも見えた。
そう、俺は彼女にあんなことを言ってしまった。
その瞬間、俺の心は重く沈んだ。
でも、勇気を出して、謝ることにした。
「あんなことを言ってしまって、ごめんなさい!」
深く頭を下げると、ミユキちゃんの母親が優しい声で言った。
「108くん、顔を上げて。ミユキに言ったことは、気にしないでね。主人も108くんのことをよく話していましたよ! こんなに大きくなって。最後に挨拶をしに来てくれて本当にありがとう!」
その言葉に、俺の中で何かが溶け出すようだった。
涙が止まらない。
「こ、こちらこそ、ありがとうございます。ヤマモトさんにプレゼントでもらった『ロビンソン・クルーソー』の本は、今でも大事にしています!」
そして、ミユキちゃんにもう一度、心から謝った。
「ミユキちゃん、本当にごめんさい!!」
ミユキちゃんの目からも、涙がこぼれ落ちた。
「うん。もう気にしてないから!」
彼女のその一言が、俺の心を救った。
隣で、母も涙を流している。
この一連のやり取りが、お通夜の場にある種の温かさをもたらしていた。
モトさんの優しさが、この場を包んでいるようだった。
俺は、ヤマモトさんのお通夜に来て、ミユキちゃんに謝れて、本当に良かったと心から思った。
ヤマモトさんに最後に会えて、そして彼の家族と和解できたこと。
これが、俺にとって最大の救いだった。
夜は更けていくが、この場所に集まった人々の心は、少しずつ癒されていくようだった。
ヤマモトさんの温かい心が、俺たちを繋ぎ、前に進む力を与えてくれる。
それが、この夜の最も大切な贈り物だった。
6年生、中学1年生と二年連続で、俺の読書感想文は「ロビンソン・クルーソー」になった。
冒険心あふれる物語に心を奪われたその日々を思い出すと、今も胸が熱くなる。
クリスマスイブの夜、俺とアオイはコージーコーナーでクリスマスケーキをゲットし、カラオケボックスへ向かった。
これから始まる2時間のクリスマスパーティーに心が躍る。
色とりどりのライトが輝く部屋に入ると、俺たちはソファに腰を下ろした。
「今日は、アオイからね!」
俺はカラオケブックをアオイに渡した。
「じゃあ、中山美穂の『愛してるっていわない』を歌います!」とアオイ。
今日の彼女は、どことなく色っぽい。
その歌詞の意味深さに、俺の心はざわついた。
アオイの歌声が部屋に響く。
彼女の表情、仕草、全てが魅力的だ。
俺の胸は高鳴り、何かが芽生えるのを感じた。
曲が終わると、俺たちはハイタッチを交わした。
ムネタッチも今日中にできればいいのに、そんなことを考えている自分に驚いた。
子供の頃は、本能のまま動けたのになあ…。
次は俺の番だ。
「B'zの『愛しい人よGood Night』を歌います!」
ムードのある曲で攻めてみることにした。
以前、伯父さんが中村雅俊の『ふれあい』を歌い、語っていたのを思い出した。
「シン伯父さんって、歌メチャクチャ上手いね!」
俺は伯父さんに言った。
「108、女を口説くには、曲選びは重要だぞ!」
伯父さんの言葉が蘇る。
「えっ! どんな歌がいいの?」
「やっぱり、しっとりと聴かせる歌だな~!」
俺はそのアドバイスを試してみた。
歌い終わると、アオイが拍手してくれた。
「108くん、聴かせるね~!」
彼女の言葉に、俺の心は高揚した。
俺たちは交互にカラオケを歌い続けた。
時間はあっという間に過ぎ、1時間が経過した。
「そろそろ、クリスマスケーキ食べちゃう!?」
俺は提案した。
「いいね! 食べちゃおう!! でも、その前にお手洗いに行ってくるね~」とアオイは微笑んで立ち上がった。
アオイが部屋を出ると、俺は一人で考えた。
アオイとのクリスマス、この瞬間が永遠に続けばいいのに。
俺は彼女が戻るのを待ちながら、心の中で次の言葉を準備した。
今日は、特別な夜だ。
俺たちの物語は、ここから始まるのかもしれない。
俺は急いで『蒼いマグカップ』をテーブルに置いた。
思いを込めて手作りしたマグカップ。
アオイが喜んでくれたら、嬉しいな!ドキドキしながら、俺はアオイを待つ。
あれ~、なかなか戻って来ないな…心配になった俺は、アオイを迎えに行くことにした。
フロントから、聞きなれた声が聞こえるぞ!?
俺は、フロントに向かう。あぁ、やっぱり、ケンジ&タキタだ!
「おーい! おまえらもカラオケか!?」
ケンジとタキタが振り返る。
二人の後ろに女子が3人いる。
アオイとリンちゃん、そしてもう一人は知らない女子だ。
リンちゃん「やっぱり、108くんも来てたのね!?」
ケンジ「あれ!? もしかして、アオイちゃんと付き合ってるの?」
鋭い観察眼だな、ケンジは。
俺はアオイの顔を見る。
複雑な表情のアオイ。
ここは、ごまかさないと…
タキタ「実は、俺が二人も呼んだんだよ! ケンジに言ってなかったっけ?」
咄嗟にしては、ナイスフォローだけど、ケンジは怪しんでる。
ケンジは女子たちを見る。
女子たちの雰囲気も変な感じだ。
リン「アオイちゃんと108くんも一緒にカラオケしよーよ!」
タキタ「すいません。6人ですが部屋は空いてますか?」
タキタは、俺にソフトウインクをする。
定員「1時間待ちとなりますが、予約を入れますか?」
タキタ「それじゃ、お願いします!」
おい! タキタ! 俺たちは、どーするんだよ!?
リン「108くん、紹介するね。彼女は『マドカちゃん』。引っ越して来たばかりで、私と同じバレー部なんだ!かわいいでしょ!?」
マドカ「はじめまして。マドカです!よろしくお願いいたします!!」
確かにかわいい!
俺「108です! よろしくね!」
そんなことより、この状況どうする!?
アオイ「ごめんなさい。わたし体調悪いから帰るね」
ざわざわ…
リン「アオイちゃん、大丈夫?ミスドで休む!?」
タキタ「あの? やっぱり、予約キャンセルでお願いします!」
アオイ「大丈夫。一人で帰れるから…」
アオイのコートは、ボックスに置いてある。
まだ、マグカップも渡してないし、どーしよ!?
タキタ「108、立ちションに付き合えよ!」
今は、それどころじゃないけど、俺はタキタとトイレに行く。
タキタ「わりーな! 咄嗟に嘘ついちゃって。アオイちゃん大丈夫かな!?」
俺は、タキタに一部始終を話し始めた…
「ギー!?」
トイレのドアが開き、ケンジが入って来た!
おまえら、俺も連れションに誘えよ!
寂しーだろ。
タキタ「今、それどころじゃないんだよ!」
ケンジ「108、隠し事は無しだぜ!」
もう、バレバレだよな。
俺は、ケンジにも現状を話した。
ケンジ「じゃあ、俺たちはマックかミスドで時間をつぶすから、その間にアオイちゃんと二人でカラオケすれば良いじゃん! あと30分だろ。俺たちのカラオケは1時間後だから、バッティングしないだろ!」
タキタ「リンとマドカちゃんには、俺から上手く言っとくよ! 108は、とりあえず自分の部屋に戻って、アオイちゃんを待ってろ!」
「ケンジ、タキタ、恩に着るぜ!!」
俺は、部屋に戻り、アオイを待つ。
それから10分後、「ガチャ!?」ドアが開いた!
「ドキドキ」そこにいたのは、アオイだった。
他には、誰もいない。
ミッション成功だ!!
To BE CONTINUED🔜