レッドゾーンで幽霊橋
【91話】
クリスマスは、気まずい別れ方をしてしまった。
そして、冬休みになった。
アオイと冬休みに会う約束は、していない。
普段だったら、別れ際に次回の会う日を決めている。
正直なところ、今は、アオイに掛ける言葉が見当たらない。
俺にとって、冬休みは好都合だった。
・・・
大晦日は、三家族が我が家に集結する。
シン伯父さん、ユミさん、ゲン伯父、チズルさん、リョウジ君、タケミチ。
俺の楽しみは、お年玉とタチミチと遊ぶこと!
・・・
俺「タケミチは、何時ごろ来るの?」
父「朝8時に家を出たみたいだから、渋滞してなければ、そろそろ到着するかもね~!?」
「ブンブブーン♪」
外から乾いたエンジン音が聴こえてきた。
俺は、窓から顔を出し、外を見る!
「あっ!ゲン伯父のタクシーだ!!・・・でも、タケミチが乗ってないぞ!?」
ゲン伯父は、白タクの運転手。
なんでも、タクシードライバーを10年以上すると白タクにパワーアップするみたいだ!
あれ!?タクシーの後ろには、スポーツカーがついている。
もしかして、あのスポーツカーは、リョウジ君の!?
スポーツカーには、薄いスモークが貼ってあるので、運転手までは見えない。
・・・
俺は、外まで、伯父さんたちを迎えに行く。
スポーツカーから降りてきたのは、やっぱり、リョウジ君だ!
俺「リョウジ君、この車どーしたの?」
リョウジ「いいだろう!108も後で、隣に乗ってみるか!?」
俺「イエース!めっちゃ楽しみー!!」
タケミチが俺に耳打ちする。
「ここだけの話、兄貴の運転やばいよ!」
何がやばいのかな!?
・・・
リョウジ「108、そろそろ、行くか!?」
そろそろって、家に着いてから、まだ10分も経っていない。
ゲン伯父「リョウジ!ドライブは、常に安全第一だぞ!!」
リョウジ「りょうか~い!おい、タケミチも行くぞ!」
・・・
タケミチ「俺は、疲れたから、108と二人で行ってくれば!」
あの、タケミチのノリが悪い。
・・・
タイヤとホイールも変えているし、内装もメチャクチャカッコいい!!
俺「この車ってソアラだよね?」
リョウジ「108、良く知ってるな!?これは『20ソアラ』ツインターボだから、加速が凄いぞ!腰を抜かすなよ。・・・ところで、どこか直線距離が長い道ってあるか?」
俺「それなら、幽霊橋だったら、確か2kmくらいあるから、良いかもね!?」
リョウジ「じゃあ、そこを案内してくれ!」
・・・
俺は、助手席に座る。
リョウジ「108、危ないからシートベルトを着けろよ!」
俺「あれ!?このシートベルってどう着けるの?」
リョウジ「これは、4点式ベルトだから、こうやって装着するんだ!」
おぉっ!レーサーみたいで、カッコいい!!
・・・
リョウジ君が、アクセルを踏み、エンジンを吹かす!
「キーキキキキキー!?」
凄い、ホイルスピンをして、車が発信する!
・・・
ヤバい!この加速とスピードは、尋常じゃない!?
ここは、田舎道だけど、80km~100kmで、走っている。
コーナーリングでは、タイヤが鳴る♪
4点式ベルトをしているので、振り飛ばされる心配はないのに、気付いたら俺は、シートの下を両手で強く握っていた。
・・・
「リョウジ君、もうすぐで、幽霊橋だ!」
信号が変わるが、リョウジ君は、発信しない。
「リョウジ君、青だよ!」
リョウジ「前に車がいると、加速出来ないからな!ギリギリまで待つぞ!」
なるほどねー。
・・・
「プップー♪」
後方の車がクラクションを鳴らす。
それでも、リョウジ君は発進しない。
そして、もう一度、クランションを鳴らされる。
リョウジ君は、ギアを入れる。
「キーキキキキキー♪」
またもや、ホイルスピンをし、ソアラは加速する!
一瞬体が、後方にもっていかれる。
橋の上りをグングン加速し、上りで80km。
何速か分からないけど、タコメーターを見るとレッドゾーンだ!!
ソアラのエンジンも唸っている!
そして、ギアチェンジして、更に加速する!
遥か前方に走行車が、薄っすらと見えるだけで、加速するには十分だ!
横を見ると、視界がぼやける。
なんだ!?このスピードは!!
橋の三分の一で、140kmに到達。
まだまだ、加速する20ソアラ。
そして、あっという間に橋の半ばに差し掛かる。
もう、外の見る余裕がない俺は、メーターをチラ見する。
おぉっ!170kmくらい出ているぞー!!
・・・
リョウジ「あぁぁ、ダメだ!前の車が邪魔だ!」
前を見ると、遥か前方にあった車が、既に目前にある。
・・・
リョウジ「108、帰りにリベンジしよう!」
・・・
この日、俺は、ソアラに憧れた!
To BE CONTINUED🔜